沖縄旅行から戻って、一週間も経たないうちに、久登と花梨は婚姻届を提出した。
花梨は他界し、久登は勘当されているため、互いに両親はすでにいない。
誰かに許しを乞う必要もなかった。なので驚くほどあっさりと二人は夫婦になった。
ほぼ同じ頃、久登が機長候補に抜擢された。機長四年目での選出は異例であり、日頃の勤務態度と操縦技術、そのすべてが評価された結果だった。
だが、その知らせを受けた直後、同居の話はいったん保留にしたほうがいいのではないか、と切り出したのは花梨のほうだった。
双子の育児による生活の変化や睡眠不足が、機長昇格試験に影響することを、彼女は何より恐れていた。
『大丈夫だよ。君たちがいた方が頑張れる』
そう久登は言ったが、それでも花梨は首を横に振り、最後まで譲らなかった。
『機長に合格してからでも、たっぷり時間はありますから……今は集中してください』
久登の夢を、今は応援したい。花梨はただただそう思っていた。
久登はしばらく沈黙したあと、久登は彼女の想いをそのまま受け取るように、静かに頷いた。
数か月だけ同居を見送ること。その代わり、必ず早く試験に合格すること――それが、二人の約束だった。
花梨は少しだけ悩んだが、最後は久登の提示した条件を飲み込む。
(ひとまず、久登さんが頑張れる状況は作れたかな)
こうして久登は副機長の業務に加えて機長就任試験の準備に取り掛かることになった。
普段から多忙な彼と会える時間は限られていたが、この試験準備が加わり、いっそう会える時間が少なくなってしまった。
だが久登は頻繁にメッセージをテレビ電話を寄こしてくれたおかげで、なんとか花梨も子供たちも乗り切れると思っていた、その矢先――。
「木梨さん、ちょっといい?」


