敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~


「そんな、そこまでしてもらわなくても……」
「俺がそこまでしたいんだ。君たちの家族の一員として、いい思い出を作りたい」

謙遜する花梨の頭を、久登はそっと撫でる。
向けられた眼差しが砂糖のように甘く、花梨は思わず久登に見とれた。
結局引き寄せられるように、二人は体を寄せ合い、淡いキスを何度か繰り返した。
花梨がポケットに忍ばせていたタイマーが震え、名残惜しかったが久登へ別れを告げる。
 

その夜、穏やかな幸福感に包まれて過ごしていると、一本の電話がかかってきた。
画面に表示された名前は、親友の璃子だった。

〈花梨、久登さんと上手くいってるみたいねー。CAの間で、もう目撃情報が多発してるわよ〉

「やっぱり……見られてるよね。久登さんに迷惑がかかってなきゃいいんだけど……」

再会して間もないというのに、すぐに久登との関係を突っ込まれ、花梨は思わず赤面する。
久登とのことも、子どもたちの存在も、彼に再会してすぐに璃子に打ち明けてあった。
璃子は久登と長年仕事を共にしてきた仲だ。
彼の誠実さや、穏やかで優しい人柄もよく知っている。だからこそ、花梨の言葉を疑うことなく受け止め、ふたりと、その間にいる子どもたちの存在まで含めて、全力で応援してくれていた。

「……噂になってるって聞くと、ちょっと困るね」

花梨はそう言って、小さくため息をつく。
久登は端正な容姿に加え、パイロットという肩書きもあり、これまで女性関係の噂がほとんどなかった。
その分、密かに想いを寄せていた女性は多かったのだと、璃子は教えてくれた。
だからこそ表立って見えないだけで、久登と付き合い始めた花梨を快く思わない女性がいることも、彼女自身、薄々感じていた。

〈まあ、みんないい大人だし、基本的には大丈夫だと思うけど……ひとりだけ、ちょっと注意したほうがいい人がいるかもしれない〉

「注意したほうがいい……人?」

その言葉に、花梨の胸がざわつく。
明確な敵意を向けられる可能性がある、という事実は、やはり心穏やかではいられなかった。

〈うん。一応ね。グランドスタッフの、鷹宮さんって人なんだけど〉

(鷹宮……?)