花梨がぽつりと呟くと、久登は小さく頷いた。
「ああ。夜ほど慌ただしくないし、昼ほど現実的でもない」
その言葉に、花梨はふっと笑う。
このあと子供たちの迎えがあり、長くはいられないと分かっているからこそ、
こうして並んで空を見る時間が、より大切に思えた。
(少しだけ。ほんの少しだけでいい)
彼と日常の合間を分け合えることが、今の花梨にはちょうどよかった。
するとふいに彼が、花梨の方を向く。
「今でも十分幸せなのはわかってる。だが……俺は欲張りみたいだ」
「え? んっ……」
ふいに近づいた綺麗な形の唇が、一瞬、自分のものを奪って離れる。
まだ柔らかい感触が残る唇に触れながら、花梨は頬を熱くした。
久登はまだ近い距離で、彼女に微笑みかける。
「花梨が足りない。もっと長い時間、一緒にいたいんだ」
「久登、さん……」
久登の言葉に、心臓が激しく脈を打つ。彼女もまた、彼と同じ気持ちだった。
こうして短い時間会えるのも幸せだが、回数を重ねるごとに、もっと彼と一緒にいたい気持ちが膨れ上がっていく。
同時に、もうそろそろ、子供たちにも久登を紹介してもいいのではと思っていたのだ。
「突然だが、今度、子供たちを連れて、沖縄に来ないか?」
「え……?」
まさに子供のことを考えていた直後だったので、久登の提案に驚く。
久登は花梨に遠慮するような眼差しを向けながらも、はっきりと告げた。
「今度那覇へ飛ぶんだが、いつもよりステイを長く取れそうなんだ。広い部屋をとって、家族で過ごしたい。三歳だと、少し長旅がきついかもしれない……そこだけが懸念点なんだが」
人一倍、飛行機が好きなふたりだ。
飛行機で沖縄に行くと言っただけで、飛んで跳ねて喜びそうだ。
花梨は思わず笑みを浮かべ、大きく頷く。
「子供たち、久登さんと同じで、飛行機とか空が好きなんです。だから、きっと喜びます」
子供たちと自分の共通点を知ってか、久登は心底嬉しそうに笑みを浮かべる。
「それならよかった。なるべく君たちが快適に過ごせるように、広い席を用意するから安心して」


