好きになった人は、みんなのアイドルで 3

「つーむぎちゃん!」
「……って呼んだら、怒る?」

教習所でのお昼休み、海斗くんに声を掛けられる。

「怒んないよ、皆 下の名前で呼ぶし」

「じゃあ紬ちゃんって呼ぼっと」
今日も元気な海斗くん。
「紬ちゃん、実技どこまでいった?」

「さっきクランクやって、脱輪しまくった」
「……免許取るの、無理かも」

「大丈夫でしょ、俺クランクとかここで初めて見たもん」
「教習所以外で見たこと無いっしょ」

海斗くんに明るく言われると、大丈夫な気もしてくるから不思議。

「そうかな。……でもクランクできないと仮免取れないし」

「大丈夫大丈夫。頑張ろ」
ごめん、ちょっと溶けてる、とチョコレートをくれる。

「そんなに餌付けしないでよ」
でもありがと、とチョコレートを貰う。

「なんか、紬ちゃん可愛いから、あげたくなっちゃうんだよね」

……え。可愛い?
びっくりして海斗くんの顔を見たけど、海斗くんは普通の顔してた。
……びっくりした。海斗くんは、誰にでもこういうこと言うのか。

「紬ちゃん彼氏と会えなくて寂しくないのー?」
カップラーメンを啜りながら海斗くんが聞いてくる。

「寂しいよ」
……寂しいけど、それだけじゃダメだと思って教習所通ってるんだもん。

「ふーん。彼女寂しがらせて、悪い男だね」

からかうように言ってくるけど、ちょっとムッとする。
「悪い男じゃないし」
「……そういう海斗くんこそ、彼女いないの?」
「海斗くん、モテそう」

「それがそうでもないんだよねー!絶賛募集中」
俺のことが気になる女の子はこちらまで、と
テレビの真似して下を指さす海斗くん。

「へえー、意外」

「……特に好きな女の子には、モテなくて」
「今も、その子めっちゃ鈍感で俺の気持ち気付いてくれない」

「そうなの?」
「アプローチが足りないんじゃない?」
笑ってからかった。

「えーそうなのかな」
「じゃあ、紬ちゃんだったら何されたら意識する?」

真面目な顔して聞くから、ちょっとドキッとした。
……それだけ、その子に真剣ってことだよね。

「うーん、なんだろ」
「同じ場所でよく会うとか?」
「あ!たまたま帰り一緒になったりとか」
悠太郎くんと仲良くなったの、なんでだっけ?と考えながら話をする。

「へえ、じゃあ俺のこと、意識してる?」

……え。どういう意味?