好きになった人は、みんなのアイドルで 3

悠太郎くんを空港に見送りに来る。
悠太郎くんは実家に帰ってたから、空港で待ち合わせ。

日本にいる間いっぱいデートしたかったけど
私の体調を気にして悠太郎くんは全然外出しようとしなかった。
……くっつきたかった、っていうのもほんとだとは思うけど。

「あ、悠太郎くん」
大きく手を振る。
「あー、いっつも俺の方が早いのに今日は紬ちゃんの方が先だったー」
「そんなのどっちでもいいよ〜」

「お弁当作ったの。機内で食べて」
「……碧くんの分も作ったけど、食べるかな」

「紬ちゃんのごはんめっちゃ美味しいから絶対喜ぶわ、ありがと」

今度はデビューに向けて本格的な準備が始まるらしく、 次の帰国は決まっていない。
いつもなら、次はいつ会えるね、ってバイバイできるのに。

「帰る日分かったらすぐ連絡してね、今度は絶対迎えに来るから」
「もちろん連絡するけど、無理しちゃだめだよ」
「……分かってる」

柱の陰でキスをされる。

「……人前ですると、碧くんに怒られるんじゃなかったっけ」
「勝手に怒ってろ」

悠太郎くんの右手には、私の左手と同じ黄色い石が光る。

「頑張ってね。体調に気を付けて。無理しないで」
「紬ちゃんの方こそ」

名残惜しくて、悠太郎くんの手を握る。
握り返してくれた手は、あったかくて安心した。

「じゃあ、行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」

この時の私たちは、
これから始まる日々を、まだ知らなかった。