月下ノ姫

夜風が、 静かに吹き抜ける

繁華街の喧騒も、 今は遠かった

海未は動けないまま、 伊織を見つめていた

好き

その言葉が、 頭の中で何度も響く

海未「……好き」

小さく呟く

まるで、 知らない言葉を確かめるみたいに

伊織「……あぁ」

海未「私、よく分かんない」

正直な言葉だった

恋愛なんて知らない

愛され方なんて、 もっと知らない

だけど

伊織が傷付いた時、 怖かった

失うかもしれないと思った瞬間、 胸が潰れそうだった

海未「でも……」

海未はゆっくり伊織の服を掴む

海未「伊織が傷付くの、嫌」

伊織の目が揺れる