月下ノ姫

放課後

海未は一人、 屋上へ来ていた

薄暗い空

フェンス越しに見える街並み

風が、 ラベンダーの髪を揺らす

海未「……はぁ」

小さく息を吐き、 手持ちシーシャを口元へ運ぶ

白い煙が、 空へ溶けていく

ここだけは静かだった

誰にも邪魔されない

何も考えなくていい

海未はフェンスへ寄り掛かりながら、 目を閉じる

だけど

──ガチャ

屋上の扉が開く音

海未「……」

振り返らなくても分かる

伊織「またここ」

海未「来ると思った」

伊織は海未の隣へ来る