月下ノ姫

雨が降っていた

冷たい雨が、 小さな身体を濡らしていく

幼い海未(うみ)は、 街灯の下で膝を抱えていた

頬は赤く腫れ、 腕には痣

震える指先を隠すように、 パーカーの袖を強く握る

海未「……っ、」

帰りたくない

でも、 帰らなければまた怒鳴られる

そんなこと、 まだ子供だった海未にも分かっていた

だけど

父親「邪魔なんだよ!!」

今日の父親の怒鳴り声は、 いつもより酷かった

投げられたグラス

割れる音

痛み

母親は助けてくれなかった

“お前なんか産まなきゃよかった”

その言葉だけが、 頭の中で何度も響いていた

海未は逃げた

何も持たず、 ただ必死に