イケオジアイドル野宮のスマイル、そしてブロマンス

 彰さんは右下水平埋伏親知らず抜歯のため、二泊三日の入院をした。退院した日、彰さんは「一人で帰れるから、迎えは来なくても平気だ」と言っていたらしい。けれど亮兄は彰さんが断ったのに関わらず「全身麻酔後だし、何かあったら心配だから」と病院へ。そしてそのままふたりは帰宅した。亮兄たちの家へ!

 ちなみに私も夕方仕事が終わると、いつもは仕事で沢山計算をして頭を使うから、リフレッシュするためにぼんやりふらふら街をさまよう習性があるが、その日は彰さんが心配だったため、寄り道せずにすぐに兄たちの家へ直行した。

 兄たちの家――そう、ふたりは数年前から、一緒に過ごした方が何かと便利だしお互いに支え合えるからと、亮兄が住んでいたマンションに同居していた。そんなイケおじふたりの生活もビューティーなブロマンス。私がいない時のふたりはどんなふうに動くの?何か、深い話もするのかしら、どんな?と想像もはかどった。

 亮兄だけ住んでいた頃には、たまにしか私は顔を出さなかったのだけど、彰さんも一緒に住んでからは些細な用事を無理やり作り、しょっちゅう兄の家に遊びに行っていた。彰さん退院後も気配を消して壁の一部のようになりながら、ふたりの会話をさりげなく盗み聞きしていた。

「あぁ、全身麻酔のお陰で早い段階で眠りの世界に入り、意識を取り戻したら、あっという間に痛みも感じぬままに手術が終わっていたのだが、その後、痛み止めの効果が切れたら痛い。今も……はぁ……」

 彰さんのため息なんてレア。そしてなんだか胸が痛く。
 亮兄は彰さんの抗生剤と痛み止めの薬を確認した。

「彰兄、大丈夫か? 薬は食後か……とりあえず、お粥作るから待ってて?」
「迷惑かけて申し訳ない。そしてありがとう」
「迷惑じゃないし。退院後はどんなの食べられるのかな?と、色々なお粥レシピ調べたから、任せてよ。今日は卵粥にしようかな!」

 歯を抜いた直後は硬いものを控え、なるべく抜いてない方の歯で噛んでくださいと病院でお達しがあったらしい。

私も彰さんのために何かをしたくて、亮兄が作っていた卵粥の卵を割った。そして彰さんのところへ美味しそうだなと眺めながら、お粥を麦茶と一緒に運ぶ。出来たてのお粥は熱くて、彰さんは少量をスプーンですくうと、ふーっと冷ましてから口に入れた。冷ます姿もイケメン、イケおじ。

「うん。美味しいな!」

 そう言いながら彰さんは微笑んだ。そう、この笑顔もたまらない。安心感があり、幾つもの試練を乗り越えてきたような余裕というか、優しさもあり……なんか、とにかく華やか爽やかなイケおじスマイル。

そして私は特に彰さんの歯並びが出会った時からずっと、好き――。

笑顔の時の口角と歯の、黒っぽい陰に見える隙間はなく、歯の列が長く見える。(ちなみにその隙間があると、全員ではないと思うけれど、可愛い系なイメージになるのだとか)綺麗に並んだ白い歯は、どの歯も彰さんのように主張しすぎずに綺麗に整列している。どちらかといえば、小顔に合わせて小さめで可愛いサイズ。

ただでさえ素敵で眩い、思わず見とれてしまう笑顔なのに、さらに魅力増す、もう、本当に素敵な歯並び!!!

 歯が痛くてしんどそうな彰さんだったけれど、その笑顔を見るとほっとした。

「あぁ、良かった! 彰さんのお腹に無事食べ物が入りそうで。大好きな彰さんの無敵素敵スマイルが健在で!」

 なんだか気持ちが高まりすぎて心の声が漏れちゃった。恥ずかしくなって私は俯いた。そしてそっとまた彰さんの顔を見ると、彰さんの表情は目を見開いたまま硬直していた。

「へ、変なこと言って、ごめんなさい!」

 顔がかぁっと熱くなった。無言で見つめあっていると「上手くご飯を食べてるかな?」と、キッチンにいた亮兄が私たちのご飯を持ちながらリビングに来て、止まっていた時間は再び動き出した。そしてみんなでお粥を食べた。



と、そんな感じで退院した日は一緒に過ごしていたなぁ。

 あの日の彰さんを硬直させてしまった後は何事もなく、いつものように過ごしていたけれど彰さんは「大好き」って言われて、何か思ったりしたのかなぁ? ちょっと意識してくれてたらいいな、なんて思ってしまったりして。あの日、家に帰る時から寝る時間までのひとりになった時間は、何回もグルグルと考えていた。そして今も考えてる。