トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

「日本の救急医療を、未来へ繋ぐために——」

院長の言葉が、静かな会場へ響く。

その瞬間。

後方に並んでいたカメラが一斉にこちらへ向けられた。

パシャッ——

パシャパシャッ——

途切れないシャッター音。

眩しいフラッシュ。

まるで医療学会というより、記者会見みたいだった。

私は少しだけ緊張しながら、壇上横へ並ぶ。

隣には森崎さん。

そのさらに横には神波さん、斉賀さん。

反対側にはフライトドクター陣。

全国でも名前の通った医師たちばかりだった。

会場には病院関係者だけじゃなく、行政関係者の姿まである。

このプロジェクトがどれだけ期待されているのか、嫌でも伝わってきた。

院長の挨拶が終わると、司会がマイクを持つ。

「それでは、今回指導を担当されるフライトドクター・フライトナースの先生方をご紹介いたします」

会場が静かになる。

最初に紹介されたのはドクター陣だった。

災害医療専門医。

外傷専門医。

小児救急。

フライト歴十年以上のベテランドクター。

名前が呼ばれるたび、会場がざわつく。

「……あの先生来てるのか」

「本気やな、このプロジェクト」

そんな声が聞こえてくる。

そして。

「続きまして、フライトナース指導チームです」

空気がまた変わる。

最初に神波さん。

次に斉賀さん。

その落ち着いた立ち姿だけで、現場経験の深さが伝わる。

そして。

「大阪中央医療センター
救命救急センター主任
森崎隼斗フライトナース」

森崎さんが軽く会釈する。

その瞬間。

女性記者たちが少しざわついた。

「あの人めっちゃかっこよくない?」

「え、モデルみたい」

「主任で30歳……?」

本人は全く気にしてない顔をしている。

慣れてるんだろうな、と少し思った。

そして。

「東京・中央大学病院より参加
一ノ瀬紗凪フライトナース」

名前が呼ばれた瞬間。

またフラッシュが一気に光る。

思った以上の反応に、少し驚く。

「女性フライトナースなんだ」

「しかも若い」

「綺麗……」

小さな声が聞こえる。

私は少しだけ緊張しながら頭を下げた。

その横で森崎さんが、小さく笑っている気配がした。

紹介が終わると、高城先生が前へ出る。

「今回のプロジェクトでは、“実践型育成”を中心に行います」

「単なる講義ではありません」

「実際に命の現場へ出て、判断し、動き、救う」

「そのために全国から指導者を集めました」

静かな声なのに、重みがある。

会場全体が聞き入っていた。

そして。

高城先生が後方の扉へ視線を向ける。

「では、今回育成対象となるメンバーに入室してもらいます」

その瞬間。

会場後方の扉がゆっくり開いた。

全員の視線がそちらへ向く。

入ってきたのは——若いナースとドクターたち。

緊張した表情。

まだ少しぎこちないフライトスーツ。

でも目だけは真っ直ぐ前を向いている。

まず入ってきたのは、育成フライトナース6人。

女性2人。

男性4人。

年齢は20代後半から30代前半くらい。

みんな各地の救命センターから選抜されてきたメンバーだった。

その後ろから、育成フライトドクターたちも入ってくる。

空気がさらに引き締まる。

森崎さんが、隣で小さく呟いた。

「……ここから始まるんですよ」

その声に、私は小さく頷いた。

目の前に並ぶ育成メンバーたち。

緊張。

期待。

不安。

色んな感情が顔に出ている。

でも。

その目は全員、“本気”だった。

すると。

育成ナースの中の一人の女性が、こちらを見て目を丸くする。

「え……」

小さな声。

その隣の男性も驚いた顔をした。

「一ノ瀬紗凪……?」

「東京の……?」

どうやら、名前を知っていたらしい。

すると周りが少しざわつく。

「あの一ノ瀬さん?」

「学会発表してた人?」

「フライトシミュレーション全国上位の……?」

思わぬ方向で空気がざわつき始める。

私は少し困ってしまう。

その横で。

森崎さんだけが、楽しそうに笑っていた。

「……せやから言うたやろ」

「うちの指導者、めっちゃ豪華なんです」