トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

病院を出て、陽貴くんが待つ家に向かう。

心はどこか軽かった。

梓と話して。

みんなに送り出してもらって。

“行ってきます”ってちゃんと言えたからかもしれない。

マンションへ着いて、合鍵で扉を開ける。

すると。

「……おかえり」

優しい声。

顔を上げると、リビングの明かりの中に陽貴くんが立っていた。

その姿を見た瞬間。

張っていたものが、一気に緩む。

「……陽貴くん」

私は小さく名前を呼ぶ。

すると陽貴くんが、ゆっくりこっちへ歩いてきた。

そしてそのまま、何も言わずふわっと抱きしめてくれる。

大きな腕。

安心する匂い。

胸へ耳を寄せると、規則正しい鼓動が聞こえる。

それだけで、“帰ってきた”って思えた。

「お疲れさま」

頭の上から落ちてくる優しい声。

私は陽貴くんの服をぎゅっと掴む。

「……みんな、送り出してくれた」

「うん」

「寄せ書きももらって」

「よかったね」

「……うん」

少し泣きそうになりながら頷くと、陽貴くんが背中を優しく撫でてくれる。

「紗凪、ちゃんと愛されてるね」

その言葉に、胸がじんわり熱くなる。

しばらくそのまま抱きしめられていると。

陽貴くんがふいに身体を離した。

「……あ、そうだ」

「ん?」

「渡したいものある」

そう言って、テーブルの方へ向かう。

そして小さな箱を持って戻ってきた。

「え……?」

「明日、離れる前に渡したかった」

私は少し緊張しながら箱を受け取る。

開けると。

中には、華奢なシルバーのネックレス。

小さなリングモチーフがついた、シンプルで綺麗なデザインだった。

「……綺麗」

思わず声が漏れる。

すると陽貴くんが、少しだけ照れたみたいに笑った。

「仕事中もつけやすいかなって思って」

「邪魔にならないやつ選んだ」

その言葉が、陽貴くんらしくて。

胸がぎゅっとなる。

「つけていい?」

「もちろん」

私は髪を上げる。

すると陽貴くんが、後ろへ回ってネックレスをつけてくれた。

指先が首元へ触れるたび、少しだけ心臓が跳ねる。

カチッ。

小さな音がして、ネックレスが胸元へ落ちる。

「……どう?」

陽貴くんが前へ回ってくる。

私はそっとネックレスへ触れた。

「…かわいい」

そう言うと。

陽貴くんが優しく目を細めた。

そして。

そっと私の頬へ触れる。

「これで、いつでも繋がってる」

低くて甘い声。

胸が熱くなる。

私は少しだけ涙ぐみながら笑った。

「……うん」

「離れてても、ちゃんと隣にいるから」

その言葉に、もうダメだった。

私は堪えきれず、陽貴くんへ抱きつく。

するとすぐに、強く抱きしめ返してくれた。

「……大好き」

「うん」

「ほんとに大好き」

耳元で何度も落ちてくる言葉。

まるで離れる不安を埋めるみたいに。

愛を伝えるみたいに。

私は陽貴くんの胸へ顔を埋めながら、小さく笑った。

「……私も」

そう返すと。

陽貴くんが安心したみたいに、もう一度優しく抱きしめてくれた。

明日から、離れる。

寂しい。

不安。

それでも。

この人がくれる愛があるから、私はちゃんと前を向ける気がした。