トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

すると梓がふいに私を見た。

その表情が、いつもより少しだけ真面目だった。

「……私」

「ん?」

「優朔さんが気になるみたい」

「……え?」

一瞬、言葉の意味を理解するのに時間がかかった。

梓は少しだけ照れたみたいに視線を逸らす。

「いや、自分でもびっくりしてるんだけど」

「なんか……一緒にいると落ち着くっていうか」

「ちゃんと見てくれてる感じするし」

「あと普通に優しいし」

そこまで言って、梓が「あーもう無理」みたいに顔を覆った。

珍しい。

ほんとに珍しい。

あの梓が、こんな顔するなんて。

私は思わず目を丸くしたあと、ふっと笑った。

「……好きなんじゃない?」

その瞬間。

「は!?ちがっ……!」

梓が勢いよく顔を上げる。

でも耳まで赤い。

分かりやすすぎる。

「いやでも、まだ分かんないし!」

「ご飯行っただけだし!」

「送ってもらっただけだし!」

「でも優朔さん、梓のことすごい見てるよ」

私がそう言うと。

梓がぴたりと止まった。

「……そうかな」

「うん」

思い返しても、優朔さんの視線はすごく自然だった。

梓が寒そうならブランケットを掛けて。

飲み物が空になればさりげなく注いで。

ちゃんと気にかけてるのが分かる。

あれはきっと、誰にでもする優しさじゃない。

「なんかさ」

梓がぽつりと呟く。

「仕事の話してても楽なんだよね」

「無理して喋らなくていい感じするし」

「沈黙あっても気まずくないし」

その声は、どこか柔らかかった。

私はそんな梓を見ながら、小さく笑う。

「よかったね」

「……何その顔」

「嬉しいから」

「なんで紗凪が嬉しそうなの」

「だって梓、ずっと仕事ばっかりだったじゃん」

そう言うと。

梓が少しだけ黙る。

「……まぁね」

「恋愛とか向いてないと思ってたし」

「でも?」

「……でも」

梓が少し照れたみたいに笑った。

「優朔さんといると、“こういう時間いいな”って思う」

その言葉が、なんだかすごく温かかった。

私は自然と笑顔になる。

「絶対うまくいくよ」

「まだ何も始まってないんだけど!?」

「でも優朔さんも絶対梓のこと気になってる」

「……そうかな」

さっきまで強気だったのに、急に不安そうになる。

その姿が可愛くて、私は少し笑ってしまった。

すると梓がじとっと睨んできた。

「なに笑ってんの」

「いや、梓が恋バナしてるの新鮮で」

「うるさい」

でも。

その横顔はどこか嬉しそうだった。

私はそんな梓を見ながら、胸の奥がじんわり温かくなる。

——よかった。

私が大阪へ行ってる間も。

梓の隣には、ちゃんと大切にしてくれる人がいるのかもしれない。

そう思えたことが、なんだかすごく嬉しかった。