トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

車に乗り込むと、陽貴くんがシートへ深く座りながら私を見る。

「今日ちゃんとご飯食べた?」

「…う、ん?」

「何」

「ゼリー」

「それ食べたって言わないから」

呆れた顔。

でも次の瞬間には、陽貴くんが小さく息を吐いた。

「……ほんと俺のお姫様は放っておけない」

そう言いながらシートベルトを引き寄せてくれる。

距離が近い。

香水の匂い。

体温。

全部にドキドキする。

付き合ってもうすぐ1年になるのに全然慣れない。

「顔赤い」

「…疲れてるから」

「ふーん」

陽貴くんがにやっと笑う。

絶対信じてない顔だ。

「紗凪ってさ」

「なに」

「ほんと、分かりやすくて可愛い」

「……」

悔しい。

すると陽貴くんが私の頬を軽くつつく。

「今日甘えモード?」

「陽貴くんがでしょ」

「俺は通常運転」

「それもそうか…」

言った瞬間。

ぐいっと腕を引かれた。

「っ……!」

気づけば、完全に陽貴くんの腕の中。

「じゃあ紗凪が甘やかして」

低く落ちる声。

近すぎる距離。

心臓がもたない。

「……ほんとずるい」

「何が?」

「その顔」

「どの顔?」

完全に分かってやってる。

でもこうして会える時間が嬉しくて。

疲れてたはずなのに、気づけば笑ってしまう。

陽貴くんがそんな私を見ながら、ふっと優しく目を細めた。

「紗凪」

「ん?」

「今日もお疲れさま」

その声があまりにも甘くて。

胸がじんわり熱くなる。

私はそっと陽貴くんの肩へ頭を預けた。

するとすぐに、包み込むみたいに抱き寄せられる。

忙しくて。

会えない日も多くて。

寂しくなることだってある。

それでも。こうして少しでも触れ合えば、“帰ってきた”って思える。

トップアイドルとただの看護師。

世間から見れば、きっと不釣り合いな二人。

でも。

「帰ろっか」

陽貴くんのその一言で、私は自然と笑った。

——これが、私たちの日常だった。