トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

「じゃあまたねー!」

「紗凪ちゃん大阪行く前にもう一回集まろ!」

「今度は鍋な」

「いや焼肉がいい」

「お前らまだ食う気かよ」

そんな賑やかなやり取りを最後に、みんなが玄関を出ていく。

梓も帰り際、ぎゅっと私を抱きしめてくれた。

「無理しすぎないこと」

「……うん」

「あと困ったらすぐ連絡」

「分かってる」

「よろしい」

そう言って笑う梓の顔が優しくて、胸がじんわり熱くなる。

その隣で。

「ちゃんと送るから」

優朔さんが自然に言った。

梓も「お願いしまーす」って当たり前みたいに返していて。

私は思わず、ふっと笑ってしまう。

——ほんと、いい感じかも。

そんなことを思いながら、二人の背中を見送った。

パタン。

扉が閉まる。

途端に、部屋が静かになる。

さっきまであんなに賑やかだったのに。

急に静かになったリビングが、少しだけ寂しい。

「……帰っちゃったね」

ぽつりと呟くと。

隣に立っていた陽貴くんが、小さく笑った。

「うん」

そのまま自然に肩を抱き寄せられる。

私は少しだけ陽貴くんへ寄りかかった。

「楽しかった」

「よかった」

「陽貴くんが呼んでくれたんでしょ?」

「まぁね」

「……ありがとう」

そう言って見上げると。

陽貴くんが少しだけ目を細めた。

「紗凪が不安そうだったから」

「…うん」

「大阪行くって決まってから、ずっと頑張ってたでしょ」

静かな声。

優しい声。

「だから少しでも笑っててほしかった」

その言葉が胸に沁みる。

私は思わず、陽貴くんの服をぎゅっと掴んだ。

「……ずるい」

「何が?」

「優しすぎる」

そう言うと。

陽貴くんがくすっと笑う。

「紗凪限定だから」

またそんなことをさらっと言う。

ほんとずるい。

私は少し照れながら、陽貴くんの胸へ額を押しつけた。

するとすぐに、頭を優しく撫でられる。

「今日いっぱい笑ってたね」

「うん」

「安心した」

その声があまりにも優しくて。

胸の奥がじんわり温かくなる。

私は小さく顔を上げた。

「……私ね」

「ん?」

「大阪行くの、まだちょっと怖い」

正直な気持ちだった。

不安はまだ消えない。

環境も変わる。

責任も増える。

陽貴くんとも離れる。

怖くないわけがない。

でも。

「今日、みんなと会って」

「なんか、大丈夫かもって思えた」

そう言うと。

陽貴くんが優しく笑った。

「うん」

「紗凪なら大丈夫」

その言葉に、胸が熱くなる。

根拠なんてなくても。

陽貴くんにそう言われるだけで、不思議と頑張れる気がした。

すると。

陽貴くんがそっと私の頬へ触れる。

「でも無理はしないこと」

「ちゃんと頼ること」

「寂しくなったらすぐ言うこと」

まるで言い聞かせるみたいに、一つずつ落ちてくる言葉。

私は小さく笑った。

「はい」

「返事だけはいい」

「もう」

その瞬間。

ふわっと抱きしめられる。

「……ほんと好き」

耳元で落ちる低い声。

心臓がまたうるさくなる。

私はそっと陽貴くんの背中へ腕を回した。

静かな部屋。

二人だけの空間。

さっきまでの賑やかさとは違う、穏やかな時間。

でもその静けさが、すごく心地よかった。

「紗凪」

「ん?」

「大阪行くまで、いっぱい思い出作ろ」

その言葉に、私は小さく笑って頷く。

「うん」

そう答えると。

陽貴くんが安心したみたいに、もう一度ぎゅっと抱きしめてくれた。