トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

その瞬間、私は反射的に立ち上がっていた。

「陽貴くん?」

「ただいまー……」

少し疲れた声。

私はぱたぱたと玄関へ向かう。

すると。

帽子とマスクを外した陽貴くんが、私を見た瞬間ふっと表情を緩めた。

「……紗凪」

その声がやけに甘い。

「おかえり」

そう言った次の瞬間。

ぎゅうっ。

思い切り抱きつかれた。

「っ、わ……!」

勢いのまま壁際まで追い込まれる。

でも抱きしめてくる腕は優しくて。

陽貴くんがそのまま私の肩へ顔を埋めた。

「……最高」

掠れた声。

思わず笑ってしまう。

「お疲れさま」

背中をぽんぽんすると、陽貴くんがさらにぎゅっと抱きしめてきた。

「もうこのまま毎日一緒にいて」

「紗凪不足すぎる」

真顔で訴えかけてくる。

私は苦笑しながら陽貴くんの背中を軽く叩いた。

「ご飯できてるよ」

「んー」

「お風呂も溜めてる」

「んー……」

全然離れる気配がない。

「陽貴くん?」

「なに」

「ご飯とお風呂、どっち先にする?」

そう聞くと。

陽貴くんがゆっくり顔を上げた。

綺麗な顔。

でもどこか甘えるみたいな目。

そして。

「……紗凪」

「え?」

低い声で名前を呼ばれる。

嫌な予感。

「なんで俺の最優先が入ってないの」

「……え?」

すると陽貴くんがにやっと笑った。

「俺、先に紗凪補給したいんだけど」

「っ……!」

一気に顔が熱くなる。

「ちょ、ちょっと……!」

「なにその反応」

「普通に恥ずかしいから……!」

私が慌てると、陽貴くんが楽しそうに笑った。

完全にからかわれてる。

でも次の瞬間。

陽貴くんがまたぎゅっと抱きしめてきた。

今度はさっきより静かに。

大事にするみたいに。

「……会いたかった」

耳元で落ちる声。

その声に、胸がぎゅっとなる。

私は小さく息を吐いて、陽貴くんの背中へ腕を回した。

「……私も」

そう返した瞬間。

陽貴くんの抱きしめる力が、少しだけ強くなった。