トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

「こちらのお部屋であれば——」

不動産スタッフの説明を聞きながら。

私たちは、並んで部屋の中を歩いていた。

広いリビング。

大きな窓。

機能性抜群のキッチン。

高層階から見える東京の街並み。

柔らかな日差しが部屋いっぱいに差し込んでいて、それだけで空気が明るく感じる。

「ここであれば、セキュリティも最高水準となっておりまして——」

オートロック。

専用エレベーター。

24時間警備。

説明を聞きながら、私は思わず周囲を見回した。

すごい。

ほんとに。

まるでドラマに出てくる部屋みたいだった。

すると隣で、陽貴くんが小さく笑う。

「紗凪、どう?」

優しい声。

私は窓の外を見ながら、自然と笑っていた。

「……すっごくいい」

その瞬間。

陽貴くんが、少し安心したみたいに目を細める。

ここなら私の病院にも近い。

陽貴くんの事務所へもアクセスがいい。

忙しい私たちでも、ちゃんと“帰ってこられる場所”になりそうだった。

それに。

何より。

この部屋、すごく陽が入る。

朝、コーヒー飲みながら一緒に窓際座れそうとか。

夜景見ながらご飯食べたいとか。

そんな未来が、自然に想像できてしまう。

私はゆっくりリビングを歩く。

すると後ろから陽貴くんが近づいてきた。

「気に入った?」

「うん」

「よかった」

その声が、どこか嬉しそうで。

私は思わず笑う。

「陽貴くん、絶対もうここ住む気でしょ」

「だってもう想像できるもん」

「なにが?」

そう聞くと。

陽貴くんが、私の隣へ並ぶ。

それから、大きな窓の向こうを見ながら静かに言った。

「ここで紗凪が“おかえり”って言ってくれる生活」

その言葉に胸が熱くなる。

私は少し照れながら、窓の外へ視線を逃した。

すると。

陽貴くんが小さく笑う。

「あと絶対、紗凪ここで寝落ちする」

「え」

「ソファで」

「しないし」

「夜勤明け絶対する」

「……否定できない」

「で、俺が運ぶ」

「やだ、恥ずかしい」

「なんで?かわいいじゃん」

さらっと言う。

ほんとずるい。

私は小さく頬を膨らませた。

すると。

陽貴くんが、そっと私の手を握る。

不動産スタッフさんが少し離れたタイミングだった。

指が絡む。

そのまま陽貴くんが、小さな声で言う。

「……ちゃんと、2人で帰ってこられる場所にしたい」

静かな声。

すごく真っ直ぐだった。

私はその横顔を見る。

アイドルとして。

たくさんの人に囲まれて。

忙しく走り続けてる人。

でも今はそんな陽貴くんが、“二人の家”を真剣に考えてくれてる。

それが、どうしようもなく嬉しかった。

私はそっと握り返す。

「……うん」

「ここ、好きかも」

そう言うと。

陽貴くんが、本当に嬉しそうに笑った。

「じゃあ、ここに決めます」

陽貴くんの一言で、私たちの住む家が決まった。

なんだかとても嬉しくて。ふわふわする。

新しい生活の匂いが、まだ何も置かれていない部屋の空気にそっと混ざっていく。

大きな窓の向こうで揺れる光を見つめなが、私はそっと息をついた。

「ここから始まるんだね」

そう呟くと、陽貴くんが小さく頷いて、私の手をそっと握る。

その温度が、やけに現実的で、やけに優しくて。

この場所が、これから“ふたりの家”になっていくことを、静かに実感した。



ほんとうにend...