トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

抱きしめてくれる陽貴くんの腕の中は、驚くくらい温かかった。

私はそっと目を閉じる。

聞こえる心臓の音。

背中へ回された大きな手。

その全部が、“安心”そのものだった。

半年前。

大阪へ向かう飛行機の中。

私はずっと不安だった。

離れること。

失うこと。

置いていかれること。

大切なものが増えたからこそ、怖かった。

でも。

離れた時間は。

私たちから何かを奪ったんじゃなくて。

ちゃんと、“確かなもの”に変えてくれていたんだと思う。

救命の現場で学んだこと。

たくさんの人との出会い。

傷ついて、悩んで、それでも前へ進んだ時間。

全部が今の私を作ってる。

そして。

どんなに遠く離れても。

帰りたいと思う場所には、いつも陽貴くんがいた。

私はそっと顔を上げる。

「……ねぇ、陽貴くん」

「ん?」

「これから先も、忙しくなるよね」

「うん」

「すれ違うことも、きっとある」

フライト。

救命。

陽貴くんの仕事。

どっちも簡単な世界じゃない。

命を削るみたいに働く日だって、きっとまた来る。

でも。

陽貴くんは迷わず頷いた。

「それでも帰る場所は一緒だから」

その言葉に。

胸が、じんわり熱くなる。

私は小さく笑った。

「……うん」

帰る場所。

その響きが、こんなに幸せだなんて知らなかった。

陽貴くんが私の額へそっとキスを落とす。

「紗凪」

「ん?」

「愛してる」

優しい声。

私は目を細める。

そして。

今度はちゃんと笑って返した。

「私も愛してる」

窓の外では、東京の夜景が静かに瞬いていた。

忙しくて。

騒がしくて。

それでも、愛おしい街。

この場所で。

また新しい毎日が始まっていく。

救命の現場で、命と向き合いながら。

たくさん笑って。

たくさん泣いて。

たまには喧嘩もして。

それでもきっと。

何度でも、“ただいま”を言い合って生きていく。

私は陽貴くんの胸へもう一度そっと寄り添った。

その温もりを感じながら。

これから先の未来を、少しだけ楽しみに思っていた。


....end