トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

紗凪side

朝。

ゆっくり目を開ける。

窓の外は、柔らかい朝焼け色だった。

ぼんやりした頭のまま、私は隣へ視線を向ける。

——あれ。

簡易ベッドが、空だった。

私は一瞬、思考が止まる。

「……ぇ……」

心臓が、ひゅっと冷える。

もう帰ったの?

だって始発って言ってた。

もしかして。

私を起こさないように、静かに帰った……?

急に胸の奥が苦しくなる。

私は慌てて周囲を見渡した。

でも。

病室のどこにも、陽貴くんはいない。

昨日まで感じていた温もりだけが残ってる。

その瞬間。

じわっと目の奥が熱くなった。

「……ぅ……」

自分でもびっくりするくらい、寂しかった。

昨日会えたせいだ。

会う前までは、“元気でいてくれればいい”って思ってたのに。

会ってしまったら、もっと一緒にいたくなってしまった。

涙が溜まる。

その時だった。

ガラッ。

病室の扉が開く音。

私は反射的に顔を上げる。

すると。

「紗凪、おはよ——」

コンビニ袋を片手に持った陽貴くんが、入ってきた。

でも。

私の顔を見た瞬間。

陽貴くんの表情が一変する。

「えっ!?なに!?」

慌てて駆け寄ってくる。

「どうした!?痛い!?しんどい!?」

完全にパニック。

私は涙を拭きながら、小さく首を横に振る。

「……ちが……」

「じゃあ何!?」

「……陽貴くん、もう帰っちゃったのかと思って……」

その瞬間。

陽貴くんが、ぴたりと固まる。

数秒沈黙。

そして。

「……なにそれ」

じわじわ顔が崩れる。

「可愛すぎ。」

「っ……!」

私は一気に顔が熱くなる。

陽貴くんは、完全に嬉しそうな顔で笑っていた。

「コンビニ行ってただけなんだけど」

「びっくりしたぁ……」

そう言いながら、ベッド横へ腰掛ける。

私は恥ずかしくなって布団を少し引き上げた。

すると陽貴くんが、くすっと笑う。

「そんな寂しかったの?」

「……だって」

「うん」

「起きたらいないんだもん……」

言った瞬間。

陽貴くんが、もう無理って顔で笑いながら額へ突っ伏した。

「やば……ほんと無理……」

「何がよぉ」

ずずっと鼻をすする

「可愛すぎて帰りたくなくなる」

その声が甘すぎて。

私はまた顔を隠した。

すると陽貴くんが、そっと私の髪を撫でる。

「ちゃんといるよ」

優しい声。

「紗凪置いて、黙って帰ったりしない」

その言葉に、胸の奥がじんわり温かくなる。

私は小さく笑って。

陽貴くんの服の袖を、そっと掴んだ。

すると陽貴くんが、すごく幸せそうに笑った。