トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

部屋の空気は、すっかり柔らかくなっていた。

さっきまで泣いていたのが嘘みたいに。

私は優朔さんの腕の中で、ぼーっと幸せを噛み締めていた。

すると。

頭の上から、ふっと笑う声が落ちてくる。

「……梓」

「っ……!」

私は一瞬で顔を上げた。

優朔さんが、楽しそうに笑っている。

今。

完全に。

呼び捨てにされた。

「え、あ、え……」

頭が追いつかない。

すると優朔さんが、わざとらしく首を傾げる。

「なにその反応」

「だ、だって……!」

顔が熱い。

絶対真っ赤だ。

優朔さんはそんな私を見て、くすっと笑った。

「彼女なんだから、いいよね?」

さらっと言う。

さらっと。

なんでそんな余裕なの!?

私は思わず視線を逸らす。

その横顔を見ながら思う。

……この人。

こう見えて、だいぶ慣れてる。

距離の詰め方も。

触れ方も。

言葉の選び方も。

全部ずるいくらい自然だ。

私だけが一人でドキドキしてるみたいで悔しくなる。

すると優朔さんが、今度は少し甘えるみたいな声を出した。

「僕もさ」

「……?」

「梓にも、“さん付け”やめてほしいな」

私はぴたりと固まる。

「……む、無理です」

即答だった。

優朔さんが笑う。

「なんで?」

「なんでって……!」

ハードルが高すぎる。

だって今までずっと“優朔さん”だったのに。

急に呼び捨てなんて無理だ。

でも。

優朔さんは全然引かない。

じり、と距離が近づく。

私は反射的に後ろへ下がる。

でもベッドの端。

逃げ場なんてすぐなくなる。

「梓」

低い声。

「呼んで?」

「む、無理……!」

「そんな難しい?」

「難しいです!」

優朔さんは完全に楽しんでる顔だった。

ずるい。

絶対分かってやってる。

私は羞恥で死にそうになりながら、顔を覆った。

すると。

優朔さんが、ふっと笑って。

「……じゃあ」

ゆっくり私の顎へ触れる。

そして。

顔を近づけながら、小さく囁いた。

「言わないとキスするよ?」

「っ!?」

心臓が爆発しそうになる。

距離が近い。

近すぎる。

もう鼻先が触れそう。

私は完全に追い詰められていた。

「……っ、ぁ……」

優朔さんは待ってる。

余裕そうな顔で。

でも目だけは、すごく優しい。

私は震える唇を開く。

そして。

「……ゆう、さく……」

本当に小さい声だった。

でも。

ちゃんと届いた。

その瞬間。

優朔さんが、にやっと笑う。

すごく嬉しそうに。

「……よく言えました」

その声が甘すぎて、また顔が熱くなる。

次の瞬間。

ちゅっ。

軽く唇へキスが落ちた。

「っ……!」

私は思わず目を見開く。

すると優朔さんが、幸せそうに笑った。

「やば」

「今の反則級にかわいい」