トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

——とにかく、早く陽貴くんに相談しないと。

そう思っていたのに。

結局その日も、次の日も、お互い忙しすぎてまともに会えなかった。

私はフライトとICU。

陽貴くんは全国ツアー準備にドラマ撮影、取材。

連絡は毎日取っている。

でも、“ちゃんと話す”時間がない。

電話越しに軽く言える内容じゃなかった。

そして3日後。

ようやく会えたのは、夜遅い時間だった。

仕事終わり。

重たい足でマンションのエントランスを抜ける。

疲れてる。

頭もぐちゃぐちゃ。

どう話せばいいかも分からない。

エレベーターの鏡に映る自分の顔は、思った以上に余裕がなかった。

ピンポーン。

インターホンを押す。

すると数秒後、ガチャっとドアが開いた。

「紗凪」

その声を聞いた瞬間だった。

気づけば私は、陽貴くんへ飛びつくみたいに抱きついていた。

「っ……」

自分でもびっくりするくらい勢いよく。

陽貴くんが一瞬驚いたように目を見開く。

でも次の瞬間には、

「……どうした?」

優しく抱きしめ返してくれた。

大きな手が背中を撫でる。

その体温に触れた瞬間。

張っていたものが、一気に崩れそうになる。

「紗凪?」

低くて優しい声。

「なんかあったの?」

その聞き方があまりにも柔らかくて。

危うく泣きそうになる。

私は陽貴くんの服をぎゅっと掴んだ。

「……会いたかった」

やっと出た言葉は、それだった。

すると陽貴くんが少しだけ息を漏らして笑う。

「俺も」

そのまま髪を優しく撫でられる。

「今日やばいくらい甘えんぼじゃん」

少し冗談っぽい声。

たぶん。

私が話しやすいように、わざと空気を軽くしてくれてる。

「……ごめん」

「なんで謝るの」

「なんか、いっぱいいっぱいで……」

そこまで言った瞬間。

陽貴くんの腕に、さらに力がこもった。

「頑張りすぎた?」

耳元で落ちてくる声。

その優しさがずるい。

私は小さく頷いた。

すると陽貴くんが少し身体を離して、顔を覗き込んでくる。

「ちゃんと中で聞くから」

優しい目。

安心させるみたいな声。

「とりあえず入ろ?」

こくりと頷く。

部屋へ入ると、陽貴くんが自然にバッグを受け取ってくれた。

その間も、片手はずっと私の手を握ったまま。

ソファへ座ると、隣へぴったり座ってくる。