紗凪side
陽貴くんとの時間は、本当にあっという間だった。
久しぶりに会えたせいか。
話したいことなんて山ほどあったのに。
気づけば、窓の外はすっかり暗くなっていた。
「……もうこんな時間」
私が時計を見ると、陽貴くんも小さく息を吐く。
「はや……」
その声が、少し寂しそうだった。
私はゆっくり陽貴くんを見る。
「……明日、朝早いんだっけ」
すると陽貴くんが頷く。
「うん」
「始発に近いやつで戻る」
その言葉に、胸が少しきゅっとなる。
やっぱり、ゆっくりは出来ない。
トップアイドルっていう仕事の重さを、改めて感じる。
「みんなはホテル取ってるらしいけど」
陽貴くんが、当たり前みたいに続ける。
「俺ここ泊まる」
私は思わず目を丸くした。
「……え?」
「紗凪といる」
「いやいや」
思わず笑ってしまう。
「疲れてるでしょ」
「ホテル行ってちゃんと寝て」
でも。陽貴くんは即座に首を横に振った。
「やだ」
子供みたいな返答。
私は苦笑する。
「陽貴くん」
「だって」
陽貴くんが、私の手を握ったまま少し眉を下げる。
「せっかく会えたのに」
「また朝帰るんだよ?」
「一秒でも長く一緒いたい」
その顔が、あまりにも真っ直ぐで。
私は言葉に詰まる。
「……でも身体しんどいでしょ」
「紗凪のほうがしんどい」
「それとこれとは別」
「別じゃない」
陽貴くんは、少しだけ拗ねたみたいに言う。
「俺、紗凪が寝てるだけでもいいからそばいたい」
その声が優しすぎて。
私はもう強く言えなくなる。
すると陽貴くんが、小さく笑った。
「ちゃんと簡易ベッド借りるし」
「看護師さんにも迷惑かけない」
「……ほんと?」
「うん」
でも。
その目は全然帰る気なんてなかった。
私は観念したみたいに小さく息を吐く。
「……わかった」
その瞬間。
陽貴くんの顔がぱっと明るくなる。
ほんと、分かりやすい。
私は思わず吹き出した。
すると陽貴くんが、安心したみたいに私の手を撫でる。
「……紗凪」
「ん?」
「全然会いに来れなくてごめん」
静かな、悲しい声。
私は小さく笑う。
「大丈夫だよ」
「陽貴くんの活躍、ずっとテレビで見てたから」
そう言って私も手を握り返す。
すると陽貴くんが、少しだけ真面目な顔になる。
「正直まだ夢みたい」
「わたしはここにいるよ」
そう言うと。
陽貴くんが、泣きそうなくらい優しく笑った。
その笑顔を見ながら。
私はふと思う。
——もし、あの日死んでたら。
この時間も。
この声も。
もう二度と感じられなかったんだ。
そう思った瞬間。
“生きてる”ことが、急に愛おしくなった。
陽貴くんとの時間は、本当にあっという間だった。
久しぶりに会えたせいか。
話したいことなんて山ほどあったのに。
気づけば、窓の外はすっかり暗くなっていた。
「……もうこんな時間」
私が時計を見ると、陽貴くんも小さく息を吐く。
「はや……」
その声が、少し寂しそうだった。
私はゆっくり陽貴くんを見る。
「……明日、朝早いんだっけ」
すると陽貴くんが頷く。
「うん」
「始発に近いやつで戻る」
その言葉に、胸が少しきゅっとなる。
やっぱり、ゆっくりは出来ない。
トップアイドルっていう仕事の重さを、改めて感じる。
「みんなはホテル取ってるらしいけど」
陽貴くんが、当たり前みたいに続ける。
「俺ここ泊まる」
私は思わず目を丸くした。
「……え?」
「紗凪といる」
「いやいや」
思わず笑ってしまう。
「疲れてるでしょ」
「ホテル行ってちゃんと寝て」
でも。陽貴くんは即座に首を横に振った。
「やだ」
子供みたいな返答。
私は苦笑する。
「陽貴くん」
「だって」
陽貴くんが、私の手を握ったまま少し眉を下げる。
「せっかく会えたのに」
「また朝帰るんだよ?」
「一秒でも長く一緒いたい」
その顔が、あまりにも真っ直ぐで。
私は言葉に詰まる。
「……でも身体しんどいでしょ」
「紗凪のほうがしんどい」
「それとこれとは別」
「別じゃない」
陽貴くんは、少しだけ拗ねたみたいに言う。
「俺、紗凪が寝てるだけでもいいからそばいたい」
その声が優しすぎて。
私はもう強く言えなくなる。
すると陽貴くんが、小さく笑った。
「ちゃんと簡易ベッド借りるし」
「看護師さんにも迷惑かけない」
「……ほんと?」
「うん」
でも。
その目は全然帰る気なんてなかった。
私は観念したみたいに小さく息を吐く。
「……わかった」
その瞬間。
陽貴くんの顔がぱっと明るくなる。
ほんと、分かりやすい。
私は思わず吹き出した。
すると陽貴くんが、安心したみたいに私の手を撫でる。
「……紗凪」
「ん?」
「全然会いに来れなくてごめん」
静かな、悲しい声。
私は小さく笑う。
「大丈夫だよ」
「陽貴くんの活躍、ずっとテレビで見てたから」
そう言って私も手を握り返す。
すると陽貴くんが、少しだけ真面目な顔になる。
「正直まだ夢みたい」
「わたしはここにいるよ」
そう言うと。
陽貴くんが、泣きそうなくらい優しく笑った。
その笑顔を見ながら。
私はふと思う。
——もし、あの日死んでたら。
この時間も。
この声も。
もう二度と感じられなかったんだ。
そう思った瞬間。
“生きてる”ことが、急に愛おしくなった。

