トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

あの日から、3日が経った。

——なのに。

森崎さんは、何も変わらなかった。

いつも通り病室へ来て。

「今日のご飯何やった?」

とか。

「平野PTまた鬼メニューやった?」

とか。

他愛ない話をして。

私が笑えば、一緒に笑って。

しんどそうなら、すぐ気づいて。

本当に、今まで通りだった。

あの日の告白が、夢だったんじゃないかって思うくらい。

でも。

ふとした瞬間。

目が合った時とか。

優しく名前を呼ばれた時とか。

あの言葉が頭を過る。

——“俺にしやん?”

胸の奥が、少しだけざわつく。

今日も森崎さんは、昼休憩の時間だけ病室へ来ていた。

「プリン食べる?」

「……またプリン」

「病み上がりにはプリンやで」

そんな会話をして。

結局半分くらい笑わされて。

そして。

PHSへ目を落とした森崎さんが、小さく息を吐いた。

「……昼休憩終わるから戻るな」

私は小さく頷く。

「……お仕事、頑張ってください」

すると森崎さんが、少しだけ目を細めた。

「紗凪ちゃんも、ちゃんと休むんやで」

その言い方が、あまりにも自然で。

私はまた少し胸が苦しくなる。

森崎さんは軽く手を振ると、そのまま病室を出ていった。

扉が閉まる。

静かな病室。

私はぼんやり天井を見上げた。

——“俺やったら、そんな顔させへん”

——“ずっとそばおれる”

頭の中で、何度も繰り返される。

私は小さく息を吐いた。

「……なに考えてるんだろ、わたし」

陽貴くんが好き。

それは、ちゃんと分かってる。

なのに。

森崎さんの言葉が、こんなに胸へ残るなんて。

考えれば考えるほど分からなくなる。

その時。

コンコン。

病室の扉がノックされた。

私は反射的に顔を上げる。

「……はい」

返事をした瞬間。

扉がゆっくり開いた。

そして。

「よぉ、紗凪」

聞き慣れた声。

私は目を見開く。

「……え」

そこに立っていたのは。

黒騎士の4人。

優朔さん。

奏くん。

蒼依くん。

そして——陽貴くん。

さらに、その後ろからひょこっと顔を出した梓が、にやっと笑う。

「サプラーイズ」

私は完全に固まった。

「……なん、で……」

声が震える。

だって。

今日来るなんて、一言も聞いてなかった。

陽貴くんは帽子とマスク姿だった。

でも。

目が合った瞬間。

その表情が、一気に崩れる。

まるでずっと我慢してた人みたいに。

陽貴くんは、数歩こちらへ近づいて。

そして。

「……紗凪」

掠れた声で、名前を呼んだ。

その声を聞いた瞬間。

胸の奥が、一気に熱くなる。

会いたかった。

ずっと。

ずっと、会いたかった。

気づけば。

ぽろっと涙が落ちていた。

すると陽貴くんが、少し困ったみたいに笑う。

「なんで泣くの」

その声まで震えていた。

私は涙を拭きながら、小さく笑う。

「……だって……」

「会いたかった……」

その瞬間。

陽貴くんが、もう耐えられないみたいに私を抱きしめた。