紗凪side
事故から、約2週間。
身体はかなり動くようになってきていた。
もちろん、まだ痛みはある。
長く歩けば息も上がるし。
咳をすれば胸が響く。
でも。
最初の頃みたいに、“起き上がるだけで限界”って状態ではもうなくなっていた。
リハビリも順調。
今では病棟内を少し歩けるくらいには回復してきている。
その日も。
病室で梓と他愛ない話をしていた時だった。
ふと、前から気になっていたことを口にする。
「……梓」
「んー?」
ソファでコンビニスイーツを食べていた梓が顔を上げる。
私は少し眉を寄せた。
「……仕事、大丈夫なの?」
その瞬間。
梓がピタッと動きを止めた。
そして。
「はぁぁ?」
って顔をする。
私は少し肩を縮こませる。
すると梓が呆れたみたいに身を乗り出してきた。
「あのねぇ」
その時点で、ちょっと怒ってる。
「私が今までどれだけあの病院に貢献してきたと思ってるの?」
「有給ほぼ使わず働いて」
「夜勤入って」
「残業して」
「後輩教育して」
「救急車何台捌いたと思ってんのよ」
ものすごい勢い。
私は思わず瞬きを繰り返す。
梓はさらに続ける。
「今それを回収してるだけだから」
「正式な休暇中!」
「むしろ病院側から“ゆっくりしてこい”って言われたわ!」
「……そ、そうなの……」
「そうよ!」
梓がドヤ顔する。
でも次の瞬間。
ふっと悪い顔になった。
「もし何か言ってくるやついたら」
「おじいちゃんに言いつけてやるわ」
私は一瞬固まる。
……おじいちゃん。
そう。
梓のおじいちゃん。
東京中央大学病院の医院長。
強い。
圧倒的に強い。
私は思わず吹き出してしまう。
「……最強じゃん……」
「でしょ?」
梓がふふんと胸を張る。
「権力には権力で対抗するの」
「怖……」
「今さら?」
そう言って笑う梓を見て、私も少し笑った。
でもその笑顔の奥で、ふと思う。
この子、本当にずっといてくれてるんだなって。
私が眠ってる時も。
苦しんでる時も。
毎日。
ずっと。
申し訳ないくらい。
でも。
同じくらい、嬉しかった。
退院したら絶対に何かちゃんとお礼をしなきゃ。
私は小さく視線を落とす。
「……ありがと」
掠れた声。
すると梓が、一瞬だけ目を丸くした。
でもすぐ、ふっと笑う。
「なに急に」
「当たり前でしょ、親友なんだから」
サラッとそう言う。
その言葉がすごく嬉しくて。
「あんた何笑ってんのよー」
そう言いながら。
梓はそっと、私の頭を軽く撫でた。
その手が、昔と全然変わってなくて。
なんだか少しだけ、泣きそうになった。
事故から、約2週間。
身体はかなり動くようになってきていた。
もちろん、まだ痛みはある。
長く歩けば息も上がるし。
咳をすれば胸が響く。
でも。
最初の頃みたいに、“起き上がるだけで限界”って状態ではもうなくなっていた。
リハビリも順調。
今では病棟内を少し歩けるくらいには回復してきている。
その日も。
病室で梓と他愛ない話をしていた時だった。
ふと、前から気になっていたことを口にする。
「……梓」
「んー?」
ソファでコンビニスイーツを食べていた梓が顔を上げる。
私は少し眉を寄せた。
「……仕事、大丈夫なの?」
その瞬間。
梓がピタッと動きを止めた。
そして。
「はぁぁ?」
って顔をする。
私は少し肩を縮こませる。
すると梓が呆れたみたいに身を乗り出してきた。
「あのねぇ」
その時点で、ちょっと怒ってる。
「私が今までどれだけあの病院に貢献してきたと思ってるの?」
「有給ほぼ使わず働いて」
「夜勤入って」
「残業して」
「後輩教育して」
「救急車何台捌いたと思ってんのよ」
ものすごい勢い。
私は思わず瞬きを繰り返す。
梓はさらに続ける。
「今それを回収してるだけだから」
「正式な休暇中!」
「むしろ病院側から“ゆっくりしてこい”って言われたわ!」
「……そ、そうなの……」
「そうよ!」
梓がドヤ顔する。
でも次の瞬間。
ふっと悪い顔になった。
「もし何か言ってくるやついたら」
「おじいちゃんに言いつけてやるわ」
私は一瞬固まる。
……おじいちゃん。
そう。
梓のおじいちゃん。
東京中央大学病院の医院長。
強い。
圧倒的に強い。
私は思わず吹き出してしまう。
「……最強じゃん……」
「でしょ?」
梓がふふんと胸を張る。
「権力には権力で対抗するの」
「怖……」
「今さら?」
そう言って笑う梓を見て、私も少し笑った。
でもその笑顔の奥で、ふと思う。
この子、本当にずっといてくれてるんだなって。
私が眠ってる時も。
苦しんでる時も。
毎日。
ずっと。
申し訳ないくらい。
でも。
同じくらい、嬉しかった。
退院したら絶対に何かちゃんとお礼をしなきゃ。
私は小さく視線を落とす。
「……ありがと」
掠れた声。
すると梓が、一瞬だけ目を丸くした。
でもすぐ、ふっと笑う。
「なに急に」
「当たり前でしょ、親友なんだから」
サラッとそう言う。
その言葉がすごく嬉しくて。
「あんた何笑ってんのよー」
そう言いながら。
梓はそっと、私の頭を軽く撫でた。
その手が、昔と全然変わってなくて。
なんだか少しだけ、泣きそうになった。

