トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

本当に。

その数時間後には、身体についていたドレーン類が次々と抜かれていった。

「はい、力抜いてくださいねー」

看護師さんの声。

私はベッドの上でぎゅっとシーツを握る。

「……っ、ぅ……!!」

痛い。

想像以上に痛い。

特に胸のドレーン。

抜かれる瞬間、変な感覚が身体の奥を通って、思わず涙が滲んだ。

「はい終わりです」

「よく頑張りました」

その言葉に、私はぐったりしながら天井を見る。

……頑張った。

ほんとに頑張った。

横で見ていた梓が苦笑する。

「顔死んでる」

「……む、り……」

掠れ声で返すと、梓が吹き出した。

でも。

全部抜け終わったあと。

身体が驚くほど軽かった。

今まで自分がどれだけ管だらけだったのか、そこで初めて実感する。

少し呼吸もしやすい。

寝返りはまだ無理だけど、それでもかなり楽だった。

そして午後。

ついに始まった。

——リハビリ。

「じゃあまず、座るところからやってみましょうか」

理学療法士さんが優しく言う。

私はその言葉に、軽く頷いた。

……座るだけ。

なのに。

それがこんなに怖いなんて思わなかった。

「ゆっくりで大丈夫ですよ」

背中を支えられながら、少しずつ身体を起こしていく。

その瞬間。

「っ……」

視界がぐらりと揺れた。

気持ち悪い。

息が上がる。

心臓がうるさい。

たった身体を起こしただけなのに。

「SpO₂大丈夫です」

「血圧も保ててますよ」

周りの声が遠い。

私は必死に呼吸を整える。

すると。

「紗凪、力抜いて」

横から梓の声。

安心させるように手を握ってくれる。

私は小さく頷く。

でも身体が全然言うこと聞かない。

事故前までは、ヘリ飛んで走り回ってたのに。

たった座るだけで、こんなにしんどい。

悔しくて。

情けなくて。

少しだけ唇を噛んだ、その時。

「最初はみんなこんなもんですよ」

理学療法士さんが穏やかに笑った。

「むしろ一ノ瀬さん、かなり頑張れてます」

私は小さく瞬きをする。

「大怪我したあとなんですから」

「焦らなくていいです」

その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。

私はベッドへ浅く腰掛けたまま、小さく息を吐く。

窓の外は晴れていた。

あぁ。

ちゃんと、生きてる。

そんな実感が、少しずつ戻ってきていた。