森崎隼斗side
紗凪ちゃんの意識が戻った。
その連絡を受けた瞬間。
気づけば、身体が動いていた。
カルテ確認してた手を止めて。
PHS握ったまま立ち上がって。
「森崎さん?」
後輩に呼ばれた気もしたけど、まともに返事した記憶もない。
ただ。
“行かなあかん”
それしか頭になかった。
ICUへ向かう廊下。
心臓がやたらうるさい。
何をそんな焦ってるんか、自分でも分からへんかった。
ただ。“間に合ってよかった”
それだけを、ずっと考えてた。
病室の扉を開けた瞬間。
ベッドの上の紗凪ちゃんが見えた。
まだ酸素マスクがついてて。
顔色も悪くて。
身体中ルートだらけ。
事故前みたいに動ける状態には程遠い。
それでも。
ちゃんと、生きてた。
その瞬間。
胸の奥が、ぐしゃっとなった。
「あぁ……」
思わず声が漏れたくらい。
あの日。
血だらけで運ばれてきた姿が、何回も頭に焼き付いて離れへんかった。
手術室へ運ばれていく背中。
閉まる扉。
“助かる保証なんてない”
そう言われた時の感覚。
全部、まだ身体に残ってる。
だから今。こうして目を開けてる姿見ただけで、泣きそうになるくらい安心した。
でも同時にすごく弱ってる姿が、苦しかった。
紗凪ちゃんは元々、強い人や。
現場でも冷静で。
しんどい顔なんか見せへん。
どんな重症現場でも前向いて。
後輩守って。
周り見て。
気づけば、自分より他人優先してる。
そんな人。
なのに今は水飲むだけでもしんどそうで。
少し笑っただけで痛そうに顔しかめて。
まともに声も出せへん。
それが、見てて胸締め付けられた。
……そばにいたい。
ふと、そう思った。
主任やから?
責任感じてるから?
自分が推薦したから?
多分、最初はそうやった。
でも。それだけやったら、多分ここまで気持ち持ってかれてへん。
目開けるたび安心して。
眠ったらちゃんと呼吸してるか気になって。
少し笑っただけで、こっちまでほっとして。
そんな自分に、途中から気づき始めてた。
ほんでその度にあかんなぁ、って思う。
だって彼女には、ちゃんと大事な人がおるから。
あのアイドル、佐野陽貴。
紗凪ちゃんが意識ない時にずっと手握ってた男。
“置いていかんといて”
って、本気で壊れそうな顔してた。
あんな顔見たら分かる。
あの人も本気や。
紗凪ちゃんも、多分同じ。
それでも。
こうして近くで見てると。
どうしても目ぇ離されへんかった。
夕方。
紗凪ちゃんが眠ったあと。
小さく息を吐く。静かな病室、規則的なモニター音。
その中で、眠る彼女を見る。
長い睫毛。
少し痩せた頬。
眠ってる時だけ、年相応に無防備で。
現場で見せる強い顔とは全然違う。
俺ははふっと苦笑した。
「……ほんま、あかんわ」
誰にも聞こえんくらい小さい声。
でも。
その時にはもう。
自分の中で何かが変わり始めてることに、薄々気づいていた。
紗凪ちゃんの意識が戻った。
その連絡を受けた瞬間。
気づけば、身体が動いていた。
カルテ確認してた手を止めて。
PHS握ったまま立ち上がって。
「森崎さん?」
後輩に呼ばれた気もしたけど、まともに返事した記憶もない。
ただ。
“行かなあかん”
それしか頭になかった。
ICUへ向かう廊下。
心臓がやたらうるさい。
何をそんな焦ってるんか、自分でも分からへんかった。
ただ。“間に合ってよかった”
それだけを、ずっと考えてた。
病室の扉を開けた瞬間。
ベッドの上の紗凪ちゃんが見えた。
まだ酸素マスクがついてて。
顔色も悪くて。
身体中ルートだらけ。
事故前みたいに動ける状態には程遠い。
それでも。
ちゃんと、生きてた。
その瞬間。
胸の奥が、ぐしゃっとなった。
「あぁ……」
思わず声が漏れたくらい。
あの日。
血だらけで運ばれてきた姿が、何回も頭に焼き付いて離れへんかった。
手術室へ運ばれていく背中。
閉まる扉。
“助かる保証なんてない”
そう言われた時の感覚。
全部、まだ身体に残ってる。
だから今。こうして目を開けてる姿見ただけで、泣きそうになるくらい安心した。
でも同時にすごく弱ってる姿が、苦しかった。
紗凪ちゃんは元々、強い人や。
現場でも冷静で。
しんどい顔なんか見せへん。
どんな重症現場でも前向いて。
後輩守って。
周り見て。
気づけば、自分より他人優先してる。
そんな人。
なのに今は水飲むだけでもしんどそうで。
少し笑っただけで痛そうに顔しかめて。
まともに声も出せへん。
それが、見てて胸締め付けられた。
……そばにいたい。
ふと、そう思った。
主任やから?
責任感じてるから?
自分が推薦したから?
多分、最初はそうやった。
でも。それだけやったら、多分ここまで気持ち持ってかれてへん。
目開けるたび安心して。
眠ったらちゃんと呼吸してるか気になって。
少し笑っただけで、こっちまでほっとして。
そんな自分に、途中から気づき始めてた。
ほんでその度にあかんなぁ、って思う。
だって彼女には、ちゃんと大事な人がおるから。
あのアイドル、佐野陽貴。
紗凪ちゃんが意識ない時にずっと手握ってた男。
“置いていかんといて”
って、本気で壊れそうな顔してた。
あんな顔見たら分かる。
あの人も本気や。
紗凪ちゃんも、多分同じ。
それでも。
こうして近くで見てると。
どうしても目ぇ離されへんかった。
夕方。
紗凪ちゃんが眠ったあと。
小さく息を吐く。静かな病室、規則的なモニター音。
その中で、眠る彼女を見る。
長い睫毛。
少し痩せた頬。
眠ってる時だけ、年相応に無防備で。
現場で見せる強い顔とは全然違う。
俺ははふっと苦笑した。
「……ほんま、あかんわ」
誰にも聞こえんくらい小さい声。
でも。
その時にはもう。
自分の中で何かが変わり始めてることに、薄々気づいていた。

