トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

紗凪side

目が覚めた次の日。

身体は、まだ鉛みたいに重かった。

少し動こうとするだけで全身が軋む。

胸も痛い。

息を吸うたび、奥の方がじわっと疼く。

何本も繋がれたルートの違和感。

モニター音。

人工呼吸器の規則的な作動音。

ぼんやりした頭で、“あぁ私ICUにいるんだ”と理解する。

でも一番つらかったのは喉だった。

痛い。乾く。

違和感がすごい。

口の中に入っているチューブのせいで、うまく飲み込むことも出来ない。

私は少し眉を寄せた。

……なるほど。

挿管中の患者さんって、こんなに苦しいんだ。

看護師として何度も見てきた。

抜管後、「喉痛い」って訴える患者さんもたくさんいた。

でも実際体験すると、全然違う。

こんなの、ずっと入ってたらそりゃしんどい。

ぼんやりそんなことを考えながら、ふと視線を横へ向ける。

ガラスの向こう。

梓がいた。

私と目が合った瞬間。

「あ、起きた!」

すぐこっちへ来てくれる。

その姿に、少しだけ安心する。

梓はベッド横へ来ると、ほっとしたみたいに笑った。

「おはよ」

私は声が出せない代わりに、小さく瞬きを返す。

すると梓が、すぐ気づいたみたいに言った。

「喉痛い?」

私はこくっと頷く。

本当に痛い。

梓は苦笑しながら言った。

「そりゃ挿管されてるからね」

「でも今日、抜管できるって」

その言葉に、私は少し目を見開いた。

抜管。

つまり、このチューブが取れる。

その瞬間、少しだけ気持ちが軽くなる。

梓はモニターを確認しながら続けた。

「呼吸かなり落ち着いてるって」

「先生たちもびっくりしてたよ」

私はぼんやりその言葉を聞く。

……そっか。

私、生きてるんだ。

まだ実感は薄い。

事故のことも、途切れ途切れにしか覚えてない。

ただ落ちてきた鉄骨。

橘さんを突き飛ばした感覚。

そのあと身体に走った衝撃だけは、変に鮮明だった。

私は少しだけ目を閉じる。

すると梓が、そっと前髪を避けてくれた。

「よく頑張ったね」

その声が優しくて。

胸の奥がじんわり熱くなる。

私はゆっくり目を開ける。

そしてジェスチャーで、“陽貴くんは?”と聞いた。

梓が少しだけ困ったみたいに笑った。

「昨日東京戻ったよ」

その瞬間。

胸が、少しだけきゅっとなった。

でもちゃんと仕事へ戻ったって聞いて、どこか安心してる自分もいた。

すると梓が、すぐ私の表情を読んだみたいに言う。

「放心状態だったけどね」

「最後まで“帰りたくない”って顔してた」

思わず少し笑いそうになる。

……想像できる。

梓も笑いながら続けた。

「あと、紗凪が手握り返した時、本気で泣いてた」

私は少し目を丸くした。

あの陽貴くんが。

泣いた。

その事実に、胸の奥がぎゅっと温かくなる。

同時に。

すごく会いたい、って思った。