トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

「先生呼んできます!」

私は反射的にICUを飛び出した。

ナースステーションへ駆け込む。

「紗凪が反応しました!」

その瞬間空気が一気に変わる。

「ほんと!?」

「高城先生呼んで!」

「西国先生にも連絡!」

スタッフが一斉に動き出す。

私はそのまま紗凪の元へと戻った。

部屋の中。

陽貴さんは、信じられないものを見るみたいな顔で紗凪を見つめていた。

「紗凪……」

握った手を、もう一度呼ぶみたいに包み込む。

すると。

紗凪の指先が、また微かに動く。

弱い。

本当に弱い反応。

でも確かに、自分の意思で動いた。

お母さんが涙を零す。

「……紗凪……っ」

お父さんも、黙ったまま目を閉じた。

その時。

ICUの扉が開く。

「失礼します!」

高城先生、西国先生、担当医、看護師たちが一気に入ってくる。

モニター確認。

瞳孔確認。

刺激反応。

一気に空気が医療現場へ戻る。

「一ノ瀬さん、分かりますか?」

高城先生が声をかける。

「聞こえてたら、もう一回手握れますか」

数秒。

静寂。

そして。

きゅっ——

また、陽貴さんの手を弱く握った。

「……っ」

誰かが息を呑む。

高城先生がすぐ指示を飛ばす。

「鎮静浅くなってきてる」

「バイタル確認継続」

「呼吸状態注意して」

西国先生も、少しだけ表情を緩めた。

「反応戻ってきてるな……」

その声を聞いた瞬間。

陽貴さんの肩が、がくっと落ちた。

今までずっと張り詰めていた糸が、切れたみたいに。

そのまま俯く。

そして。

ぽたっ——

初めて。

涙が落ちた。

「……よかった……」

掠れた声。

震えていた。

「……っ、よかった……」

何度も繰り返す。

その姿を見て。

私は思わず目頭が熱くなった。

まだ安心なんて出来ない。

人工呼吸器も外れてない。

状態だって不安定。

でも。

それでも。

確かに紗凪は、“戻ろう”としていた。

陽貴さんは、涙を拭うこともせず。

ただ紗凪の手を握り続ける。

まるで。

もう二度と離さないみたいに。