トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

ICUへ戻る。

扉を開けた瞬間、また慌ただしい空気が流れ込んできた。

「血ガス出ます」

「輸液あと30で更新です」

「SpO₂少し落ちてます」

「吸引入ります」

看護師たちが絶えず出入りしている。

人工呼吸器の設定確認。

点滴交換。

ドレーン排液チェック。

鎮静確認。

モニター管理。

重症患者特有の、張り詰めた空気。

それでも。

その中心で陽貴さんだけは、一歩も動かなかった。

ベッドサイドの椅子へ座ったまま。

ずっと紗凪の手を握っている。

何度看護師が入ってきても。

処置が始まっても。

その手だけは絶対離さない。

私は少し離れた場所から、その姿を見る。

……本当に。

どれだけ大切にしてるんだろう。

恋人とかそんな簡単な言葉じゃ足りないくらい。

失いたくないっていう気持ちが、背中から伝わってくる。

担当看護師が鎮静確認を終えて部屋を出ていく。

少しだけ空気が落ち着いた。

私はゆっくり陽貴さんの隣へ行く。

「……陽貴さん」

「…ん」

私は静かに続ける。

「今日は、一日付き添い必要みたいです」

「だから……交代で少し休みませんか」

正直、このままじゃ危ないと思った。

顔色も悪い。

目も充血してる。

まともに食べてもないはず。

でも。

陽貴さんは、紗凪から目を離さないまま、小さく首を横に振った。

「……俺は」

掠れた声。

消えてしまいそうなくらい小さい。

「紗凪のそばにいるよ」

その言葉に、胸が締め付けられる。

私は何も言えなくなる。

だって。

その声があまりにも必死だったから。

離れたくない。

目を離した瞬間、消えてしまいそうで怖い。

そんな気持ちが全部伝わってきた。

陽貴さんは、そっと紗凪の手を撫でる。

「……ごめん」

ぽつりと落ちた声。

「もっと早く会いに来ればよかった」

私は息を呑む。

「忙しいの分かってたから」

「紗凪、ずっと“頑張ってるよ”って笑ってたから」

その声が少しずつ震えていく。

「だから大丈夫なんだって……思ってた」

違う。

紗凪はきっと、心配かけたくなかっただけだ。

でも今それを言ったら、陽貴さんはもっと自分を責める。

私は何も言えなかった。