トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

一方その頃。

ヘリの中。

橘は震えていた。

顔面蒼白。

唇も白い。

頭の中では、何度も同じ光景が再生されていた。

自分が飛び出した。

西国先生が叫んだ。

紗凪が自分を突き飛ばした。

そして。

鉄骨が落ちた。

目の前には血だらけの指導看護師。

「……私のせいだ……」

小さく漏れる声。

でも。手だけは止めなかった。

震える手でルートを押さえる。

酸素を確認する。

モニターを見る。

SpO₂はまだ不安定。

呼吸音も悪い。

「橘、意識確認!」

西国先生の声。

「っ……はい!」

橘が紗凪へ顔を近づける。

「一ノ瀬さん!」

「聞こえますか!?」

返事はない。

浅い呼吸だけ。

その瞬間。

橘の目から涙が落ちた。

でも拭う暇なんてない。

「血圧さらに低下!」

西国先生が舌打ちする。

「くそ……」

ヘリの中の空気が張り詰める。

普段なら、紗凪がいた。

こういう時、一番冷静に空気を整えてくれる人だった。

でも今は違う。

その紗凪が、ぐったり横たわっている。

「橘、しっかりしろ」

西国先生の低い声。

「今崩れたら、一ノ瀬が死ぬぞ」

その言葉に。

橘がはっと顔を上げる。

涙で滲んだ視界。

震える手で、もう一度モニターを確認する。

「……SpO₂、82」

声が掠れる。

西国先生が頷く。

「換気補助続けろ」

「はい……!」

ヘリは夕焼けの空を裂くように飛び続けていた。

大阪中央医療センターへ。

一ノ瀬紗凪を、生かすために。