トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

救命センターへ戻ると、ちょうど森崎さんがステーション前でスタッフと話していた。

フライトスーツ姿のまま、カルテを片手に何か指示を出している。

相変わらず忙しそうだ。

私たちに気づいた瞬間、ふっと表情を緩めた。

「おかえり」

「ただいま戻りました」

橘さんも小さく頭を下げる。

森崎さんはそのまま私たちの顔を見比べた。

「……ええ顔して帰ってきましたね」

その言葉に、橘さんが少しだけ笑う。

「今日はかなり勉強になりました」

「うんうん」

森崎さんは頷きながら、私たちをカンファレンススペースへ促した。

「ほな軽く振り返りしよか」

テーブルへカルテを広げる。

今日の症例。

山間部での転落外傷。

現着時ショック状態。

骨盤骨折疑い。

搬送判断も難しかったケース。

森崎さんは椅子へ腰掛けながら言う。

「でも、最近ほんまええチームなってきましたね」

その言葉に。

私と橘さんは自然と顔を見合わせた。

最初の頃なら、こんな空気には絶対なっていなかった。

ぎこちなくて。距離があって。

どこか探り合っていた。

でも今は違う。

現場を一緒に越えて、怒られて、振り返って。

少しずつ、本当に“ペア”になってきている。

すると橘さんがぽつりと言う。

「……最初、一ノ瀬さんのことめちゃくちゃ怖かったです」

「え!?」

思わず声が裏返る。

森崎さんが吹き出した。

「そらそうやろなぁ」

「なんでですか!?」

「いや、冷静すぎるんですよ」

橘さんが真顔で言う。

「全然焦らないし」

「ずっと周り見えてるし」

「何考えてるか分からなかった」

「そんなことないよ……」

困っていると。

森崎さんが笑いながら立ち上がる。

「まぁでも」

カルテをぽん、とまとめる。

「今はちゃんとチームなれてるやん」

その言葉が、少し嬉しかった。

気づけば、大阪へ来て一ヶ月。

慣れない土地だったはずなのに。

いつの間にか。

ここにも、“居場所”が出来始めていた。