トップアイドルは白衣の天使に恋をするsecond

紗凪side

車が走り出してからも陽貴くんはずっと私の手を握ったままだった。

信号待ちのたびに、指先を絡めるみたいにぎゅっと握り直される。

「運転しにくくない?」

「片手でできる」

さらっと返ってくる。

横顔を見る。

帽子を深く被っていても隠しきれない整った顔立ち。

長い指。

ハンドルを握る姿ですら絵になる。

ほんと、この人アイドルなんだなって改めて思う。

でもそんな人がこうして当たり前みたいに手を繋いでくれてることが、今でも少し不思議だった。

「紗凪」

「ん?」

前を見たまま、陽貴くんがぽつりと言う。

「最近あんまり会えなくてごめんな」

その声が思ったより優しくて。

少しだけ胸がきゅっとなる。

「お仕事、忙しいの分かってるから大丈夫。
それに撮影の合間とかで電話してくれてるじゃん!
それだけで充分だよ」

本心だった。

寂しくないと言えば嘘になる。

でも陽貴くんがどれだけ頑張ってるか知ってるから。

会えない時間も、ちゃんと意味があるって思える。

すると陽貴くんが小さく笑った。

「ほんとそういうとこ優しいよな」

「普通だよ」

赤信号で車が止まる。

陽貴くんがこっちを向く。

「俺は紗凪にもっと拗ねてほしい」

「え?」

「寂しかった、もっと構ってよとか言って」

低い声。

真っ直ぐ見つめられて、心臓が跳ねる。

「紗凪からの愛をもっと感じたい」

「……っ」

言葉に詰まった私を見て、陽貴くんが楽しそうに笑った。

「顔赤い」

「……陽貴くんのせい」

ほんと意地悪。

でもその顔が好きだから悔しい。