貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

レビューはその後、榊課長が冷静に立て直した。

「ご指摘ありがとうございます。時間帯別の課題整理は残しつつ、ブランド体験として一本化します」

声は落ち着いていた。

「現場導線の改善は有効です。ただ、それが単発の施策に見えている点はこちらの設計不足です。次回までに、入店前から退店後までの感情変化を再構成します」

久保田が頷く。

「そこが見えれば、かなり強くなると思います」

「本日中に骨子を再提出します」

榊課長が即答した。

本日中。

私の胃が、小さく悲鳴を上げた。

けれど、榊課長の表情は変わらない。

「現場検証の方向性は崩しません。そこに、感情の連続性を足します」

守っている。

そう思った。

私の案を切り捨てず、資料全体を守りながら、先方の指摘を受け止めている。

この人は、ただ厳しいだけではない。

前に出したものが揺らいだ時、どこを守り、どこを変えるべきかを判断できる。