貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

昼休みになると、私はいつものようにお弁当を早めに食べ終えた。

「藤代さん、今日も公園?」と大崎が言った。

「はい。少し外の空気を吸ってきます」

「えらいよね。私は外に出る気力もない」

「座っているだけですから」

「それがえらいのよ」

私は曖昧に笑って、バッグを持った。

会社から歩いて七分ほどの場所に、小さな公園がある。
駅前の喧騒から少し外れた、細長い公園。ベンチが三つ、古い桜の木が数本、端には自動販売機と、いつも同じ場所で昼寝している白っぽい猫。

私はその猫を、心の中で「しらたま」と呼んでいる。

公園は、私の聖域だった。

会社の人はほとんど来ない。
ランチに使うには少し地味で、通り道にするには少し遠い。
だから私は、昼休みの残り三十分をここで過ごす。

ベンチに座り、バッグからiPadを取り出す。
画面を開く前に、周囲を確認する。

右、犬の散歩をしているおじいさん。
左、自販機の前で電話しているサラリーマン。
正面、しらたま。
背後、誰もいない。

よし。

私はスタイラスペンを握り、昨日の続きを開いた。