貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

「藤代」

榊課長の声がした。

低く、短い。

私は我に返った。

全員がこちらを見ていた。

「何かあるか」

榊課長が尋ねる。

私は言いかけた言葉を、喉の奥で飲み込んだ。

「……いえ。今のご指摘を踏まえて、整理します」

言った瞬間、自分の中で何かが閉じる音がした。

榊課長の目が、ほんの少しだけ細くなった。

瀬名も、私を見ている。

分かっている。

二人とも、私が何かを飲み込んだことに気づいている。