貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

続いて、もっと古い記憶が胸を掴んだ。

学生の頃。
机の上に置いていたノート。
描いていた漫画を見られて、笑われた。

『こういうの好きなんだ? 意外』

悪意のない、軽い笑い。

でも、その後に続いた言葉を、私はずっと忘れられない。

『藤代って、もっと普通かと思ってた』

普通。

その言葉は、私の好きなものを一瞬で変なものにした。

好きなものは、見せたら評価が変わる。
本気で考えたことほど、笑われる。
自分の中の熱を出した瞬間、誰かの目に晒される。

会議室で、私の手が冷えていく。

今ここで、私は何を言おうとしている?

店と客の距離が深まる?
関係性?
朝は背中を押し、昼は隣に座り、夜は受け止める?

また、変なことを言っていると思われるかもしれない。

浮かれていると思われるかもしれない。

趣味を仕事に混ぜすぎていると思われるかもしれない。