貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

瀬名が、会議室の入口から顔を出した。

「先輩、現地写真の補足、最新版に入れておきました」

「ありがとう。確認します」

「今日、先輩が説明するところありますよね」

「少しだけです」

「少しだけじゃなくて、ちゃんとです」

声は明るい。

けれど、その目は笑っていなかった。

逃げないでくださいね。

この間から何度も言われている言葉が、また胸に刺さる。

私は頷いた。

「……分かってます」

「ならいいです」

瀬名はにこっと笑った。

大型犬。

ただし、こちらが逃げ道を探すと即座に回り込んでくる大型犬である。