貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

「課長も、先輩に言ったんですか」

瀬名が言った。

「仕事に生かせ、って」

榊課長は一拍置いて、答えた。

「言った」

「へえ」

瀬名の笑顔が戻った。

ただし、柔らかくはない。

「じゃあ、俺も同じこと言います」

「瀬名」

榊課長の声が、静かに低くなった。

「遊びではない」

「分かってます」

「業務だ」

短い言葉だった。

けれど、その「業務だ」に込められた圧は、昼の公園には不釣り合いなくらい強かった。

瀬名は、それを真正面から受け止めた。

「じゃあ、業務なら俺も協力していいですよね」

榊課長は答えなかった。

ただ、私の方を見た。

「藤代」

「はい」

「午後、瀬名と俺が行く予定の営業同行に入れ」

「え」

「リュミエール本部の運営担当と打ち合わせがある。瀬名が札幌で拾った課題を説明する。お前は感情導線との接続を確認しろ」

急に仕事になった。

いや、最初から仕事の話ではあった。
あったけれど、展開が早い。

瀬名が嬉しそうに笑った。

「先輩、よろしくお願いしますね」