貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

振り向かなくても分かる。
この声。
この圧。
この、ただ立っているだけで周囲の気温を二度下げる存在感。

榊課長だ。

どうして。
なぜ。
この公園は、部署の共有スペースにでもなったのか。

榊課長は、自動販売機の方から歩いてきた。片手には缶コーヒー。足元には、当然のようにしらたまがついてきている。

しらたま。
あなた、まさか案内したんですか。
猫の顔をして、上司召喚スキルを持っているんですか。

榊課長の視線が、私、瀬名、そして私が抱え込んだiPadへと順番に落ちた。

沈黙。

瀬名が、先に口を開いた。

「課長も、ここ来るんですね」

「たまにだ」

「毎日ではなく?」

「……だいたい毎日だ」

私は思わず榊課長を見た。

同じ言い方をされた。
先日の私と同じ負け方をしている。

この公園、正直者を生む魔力でもあるのか。