貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

「藤代」

榊課長がこちらを見た。

「はい」

「差し替え」

「終わりました。確認用、共有します」

「早いな」

それは、褒め言葉だったのだろうか。

榊課長の表情は変わらない。
でも、その一言だけで、胸の奥が少しだけ温かくなった。

いやいやいや。
落ち着け、藤代澄乃。
上司に「早いな」と言われただけで喜ぶな。犬なら尻尾を振るところだが、私は犬ではない。貴腐人だ。

より業が深い。