十時の打ち合わせで、瀬名は札幌店の補足を的確に出した。
「札幌店は昼の回転率自体は高いです。ただ、ヒアリングでは席が埋まっていそうで入らなかったという声がありました。藤代さんの昼導線案と合っています」
私の名前が出た瞬間、少しだけ肩が跳ねた。
瀬名は、モニターの写真を切り替える。
「この角度だと分かりやすいんですけど、入口から一人席が見えないんですよね。席数はあるのに、見えないから不安になる。なので、店頭で席種を見せる案はかなり刺さると思います」
営業担当が頷く。
真鍋がラフにメモを足す。
榊課長は無表情で聞いている。
瀬名は続けた。
「あと、昼のコピー。『一人になりすぎず、少し逃げる』っていうニュアンス、現場の声に近いです。ランチって、休憩ですけど、完全にオフじゃない。午後に戻る前の一時退避なんですよ」
一時退避。
その言葉に、私は少し驚いた。
私の「逃げ場」を、瀬名は営業の言葉に変えた。
軽く見せているのに、ちゃんと分かっている。
「藤代さんの感情導線、現場と相性いいです」
瀬名が、明るく言った。
「先輩、やっぱり人のこと見るのうまいですね」
会議室で、真っ直ぐ褒めないでほしい。
私は手元の資料を見下ろした。
榊課長が短く言った。
「藤代の案は、次回レビューの中心に置く」
「はい」
瀬名は笑顔で答えた。
けれど、その一瞬、彼の視線が榊課長から私へ移った。
何かを測るような目だった。
大型犬、ではない。
営業の現場で切れる男の目だ。
私はなぜか、背筋を伸ばした。
「札幌店は昼の回転率自体は高いです。ただ、ヒアリングでは席が埋まっていそうで入らなかったという声がありました。藤代さんの昼導線案と合っています」
私の名前が出た瞬間、少しだけ肩が跳ねた。
瀬名は、モニターの写真を切り替える。
「この角度だと分かりやすいんですけど、入口から一人席が見えないんですよね。席数はあるのに、見えないから不安になる。なので、店頭で席種を見せる案はかなり刺さると思います」
営業担当が頷く。
真鍋がラフにメモを足す。
榊課長は無表情で聞いている。
瀬名は続けた。
「あと、昼のコピー。『一人になりすぎず、少し逃げる』っていうニュアンス、現場の声に近いです。ランチって、休憩ですけど、完全にオフじゃない。午後に戻る前の一時退避なんですよ」
一時退避。
その言葉に、私は少し驚いた。
私の「逃げ場」を、瀬名は営業の言葉に変えた。
軽く見せているのに、ちゃんと分かっている。
「藤代さんの感情導線、現場と相性いいです」
瀬名が、明るく言った。
「先輩、やっぱり人のこと見るのうまいですね」
会議室で、真っ直ぐ褒めないでほしい。
私は手元の資料を見下ろした。
榊課長が短く言った。
「藤代の案は、次回レビューの中心に置く」
「はい」
瀬名は笑顔で答えた。
けれど、その一瞬、彼の視線が榊課長から私へ移った。
何かを測るような目だった。
大型犬、ではない。
営業の現場で切れる男の目だ。
私はなぜか、背筋を伸ばした。



