貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

榊課長は、私の隣に立った。

近い。

肩が触れるほどではない。
けれど、スーツの袖が視界の端に入る距離だ。

「二人客なら?」

「……その場合は、少し斜めに立つ方が安心します」

「なぜ」

「今みたいに、こう正面だと、相手を急かしているように見えるので……。斜めだと、一緒に見る感じになるというか」

「こうか」

榊課長が、私の正面から一歩ずれた。

斜め横。

視線が、同じ方向を向く。

近い。

「藤代」

「はい」

「顔が赤い」

「店内が暖かいので」

「まだ外だ」

「外気が、情熱的で」

「無理がある」

ありますね。
自分でも分かっています。