貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

会議が終わると、私は椅子にもたれた。

生きている。
今回も、私は生きて会議を終えた。

「藤代」

「はい」

「昼、空けろ」

生還直後に次の戦場が決まった。

「また店舗ですか」

「近隣店で昼導線を見る。今日の案を現場で確認する」

「分かりました」

「それと」

榊課長は、資料を閉じながら言った。

「参考がいるなら、俺で足りるだろう」

私は一瞬、何を言われたのか分からなかった。

「……何の参考ですか」

「人の距離感だ」

「距離感」

「一人客、二人客、待ち合わせ。俺がいた方が、お前は表情と立ち位置を見やすいだろう」

見ます。

見ますけど。

それを上司本人が、半ば本気で協力する宣言をするのはどうなのか。

「取材協力ということですか」

「そうだ」

「課長が」

「不満か」

「情報量が多いです」

「処理しろ」

無茶を言う。