貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

会社に戻る途中、私たちはいつもの公園の横を通った。

白っぽい猫が、ベンチの下で丸くなっている。

しらたまだ。

榊課長の足が、自然に止まった。

「寝てる」

声がまた、部署では聞かない温度になった。

私は隣で、その横顔を見てしまった。

やわらかい。
本当に、猫に向ける声だけやわらかい。

「名前、あるんですか」

「知らない」

「私は、しらたまって呼んでます」

榊課長がこちらを見た。

「しらたま」

「白っぽくて、丸いので」

「そのままだな」

「ネーミングセンスには自信がありません」

榊課長は、ベンチの下の猫に目を戻した。

「悪くない」

また、その言葉。

悪くない。