貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

会議はその後、具体的な提案項目に進んだ。

ブランドコンセプト案。
店頭ポスターの方向性。
アプリ通知の文面。
時間帯ごとのペルソナ。

私は発言するたびに緊張した。
緊張したが、榊課長は一度も私をからかわなかった。
むしろ、私の言葉を短く拾い、会議の流れに置き直していった。

「今の藤代の話は、夜の訴求に使える」

「それは昼の一人客の導線だ」

「感情の入口を三つに分ける。朝、昼、夜」

まるで、私の曖昧な言葉に骨を入れているようだった。

会議が終わったのは、予定より十五分遅れだった。

私はノートを閉じ、深く息を吐いた。

生きている。
私は生きて会議を終えた。

それだけで今日はもう帰りたい。

「藤代、残れ」

帰れなかった。