貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

「藤代さん、朝から顔が死んでる」

声をかけてきたのは、大崎だった。

「おはようございます」

「うん、おはよう。で、どうしたの。胃薬いる?」

「あります」

「持参済みか」

「大人なので」

大崎は苦笑しながら、自分の席にバッグを置いた。

「今日、リュミエールの初回会議でしょ?」

「はい」

「大丈夫。榊課長が入れるって決めたなら、何か理由があるよ」

「その理由が、できればもっと健全な方向であってほしかったです」

「健全じゃないの?」

私は口を閉じた。

言えない。

昨日、公園で、昼休みに、iPadで、BL漫画のネームを描いていたところを榊課長に見られました、とは言えない。

言えるわけがない。

言った瞬間、大崎はきっと笑わない。
でも、「え、藤代さん、そういうの描くんだ」と驚くだろう。

その驚きが怖い。

私は曖昧に笑って、パソコンを立ち上げた。