貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

榊が、隣でアイスラテを少し持ち上げた。

「午後、声かけスクリプトの修正を見る」

「はい」

「だが、昼休みの残り五分は休め」

「命令ですか」

「業務指示だ」

「便利な言い方ですね」

榊の口元が、一ミリ動いた。

私は笑って、iPadを膝の上に置いた。

秘密を抱えて一人だった昼休みが、好きな人がすぐそばにいる昼休みになった。

貴腐人であることは、消えない。

でももう、それは憂鬱の理由ではない。

私の好きは、弱みではなく、武器で、彩りで、恋になった。