貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

榊は、しばらく黙っていた。

それから、低く言った。

「悪くない」

私は笑った。

「それ、便利すぎます」

「便利だ」

「でも、好きです」

言ってから、私は固まった。

あまりにも自然に出てしまった。

昼休みの公園で。
アイスラテ片手に。
ベンチで隣に座る好きな人へ。

好きです。

何度言っても、まだ耳が熱くなる。

榊は、カップを持つ手を少し止めた。

それから、私の方を見ないまま、短く言った。

「俺もだ」

反則。

心臓に対する反則。

私はアイスラテを飲んだ。

冷たい。
ありがたい。
しかし今の糖度には、冷たさが足りない。