貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

昼休みが終わる直前、私たちは五分差で会社に戻ることにした。

合理的だ。
大人だ。
社会人だ。

ただし、しらたまにはすべて見られている。

会社に戻ると、大崎が私の顔を見た瞬間、椅子の背もたれに肘を置いた。

「で?」

「で、とは」

「その顔は、仕事じゃない話をした顔」

「大崎さんの観察眼、最近業務外まで鋭すぎませんか」

「藤代さんが分かりやすくなっただけ」

隠すのが下手になった。

榊にも言われた言葉が、胸の中で少し甘く響く。

私はパソコンを開いた。

画面には、リュミエール本提案の資料。

『三分だけ、あなたの味方になる。』

昨日まで少し照れくさかったその言葉が、今日は前よりもまっすぐ見えた。