貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

榊は、私の笑いが落ち着くのを待ってから、静かに続けた。

「君を案件に入れたのは、仕事として必要だと判断したからだ」

「はい」

「ただ、公園で君が好きなものを抱えて、死にそうな顔をしていた時」

「死にそうな顔」

「していた」

「していましたね……」

社会人人生のエンドロールが流れていたので。

榊は、真面目な顔のまま言った。

「その熱を、隠してほしくないと思った。君が自分の目を、弱みじゃないと知るところを見たいと思った」

胸の奥が、ゆっくり震えた。

「それは、上司としてだけではなかったと思う」

榊の声が、少し低くなった。

「藤代」

「はい」

「君の物語の外にいたくない」

息が止まった。

「俺は、君の隣にいたい」