貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

「でも、課長が逃げるなら、俺は文句言います」

「文句」

「はい。仕事の場で先輩を認められるなら、私的なところでも向き合えって。黙って傷つけるなってね」

言葉が、胸に落ちた。

瀬名は私の頭に手を伸ばしかけて、途中で止めた。

そして、軽く拳を握って下ろした。

「……今のは、なしです」

「はい」

「先輩、明日、公園行くんですよね」

「え」

「行きたい顔してます」

私は何も言えなかった。

行きたい。

昼休みの公園に。

榊課長に会いたい。

仕事の話ではなく、あの人の沈黙の理由を知りたい。
私の気持ちを、なかったことにしたくない。

初めて、自分からそう思った。